Viva La Trip 〜世界を旅しよう〜

国内外問わず旅行についての様々な情報を提供します。筆者は、現在社会人3年目となり、大学生時代には世界35カ国を旅してきました。現在では、アジアを中心に週末を利用して旅行をしています。是非活用してください!

「入門 国境学 領土、主権、イデオロギー」(岩下明裕著)を読んで

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こんにちは。

今回は旅行情報ではなく、おすすめの本をご紹介したいと思います。

本を読むことが好きで色々な本を読んできましたが、今回ご紹介するのはタイトルにある通り、中公新書出版で岩下明裕著の「入門 国境学 領土、主権、イデオロギー」です。

なぜ急に本を紹介?と思われた方もいらっしゃると思います。

一見旅行とあんまり関係がなさそうにみえるかもしれませんが、様々な国や地域へ旅行をしてきた人にとってみると、なかなか面白い内容でとても勉強になると思います。

特に、陸路で国境を渡ってきた人にとっては、なるほどなと思う箇所もあるかと思います。

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さて、一体どんな本なのでしょうか。

 

境界とは何か。

領土とは何か。

国境をどう考えるか。

世界の事例を学び、日本という「国のかたち」のあり方について考えるきっかけを与えてくれる内容になっています。

 

まず、序章の「世界の境界・国境を比較する」で、ロシア・中国・北朝鮮の3国が接する国境、フィンランドとロシアの国境、冷戦下のベルリンの壁、プロテスタントとカトリックの紛争で建設された北アイルランドのベルファストのピースライン、イスラエルのグリーンラインなど、様々な境界・国境について触れています。

区切られた壁に対しての見方は、分断されたそれぞれの国や地域で異なっています。分断する側から見た「壁」と分断された側から見た「壁」は同じものであっても捉え方はそれぞれです。それを不法入国者を制限するための単なる「フェンス」として作ったとしても、反対側からみるとそれは超えられない「壁」に感じることもあるでしょう。

世界には様々な境界があり、壁のように形のあるものからイデオロギーなどによる目に見えない壁もあります。

そして、第一章では、境界について多面的に分析をするボーダースタディーズ(境界研究)について説明しており、また、著者が実際に研究した内容やこの道の先駆者たちの功績などについて触れています。

第二章では、ボーダースタディーズの研究動向について概観し、分析ツールについて説明されています。

 

第三章では、世界の国境がいかにして引かれてきたのか、そして誰によって引かれてきたのかについて触れています。

海に囲まれた島国「日本」で生まれ育ってきた私たちにとっては、ボーダー(国境)について考える習慣もなければ気に掛ける必要もありません。日本と外国の国境は広大な海上にあり、それゆえ曖昧な印象を受けることもあるかもしれません。

しかし、陸続きとなっている諸外国は、隣国と近接しており、洋上の国境とは違い人や物の往来も激しいためその管理が重要になり、そこに住む人たちの境界に対する意識も高いものと想像できます。

当初国境に無頓着であった私が気にするのはせいぜいベトナムとカンボジアの国境や、カンボジアとタイの国境など、自分が陸路で往来したことのあるイミグレーションぐらいでした。

しかし、よく考えてみると、出入国管理のイミグレーション以外の国境はどうなっているんだろう?そもそもどうやって線が引かれたんだろう?といった疑問が湧いてきます。これらの答えもこの本に書かれています。

 

第四章では、領土という観念に人間がメンタル的なものを投影して問題を難しくしてきたかが論じられています。

 

第五章では、透過性というツールを使って境界の機能についてメキシコ・アメリカ国境や香港・深セン境界、スウェーデン・フィンランド国境など、様々な事例を提示して比較検討をします。

そこで重要になるのが、「砦」と「ゲートウェイ」という相対する考え方です。砦とは、敵から自らを守るためのもので、それは壁であり行き止まりです。それに対してゲートウェイとはそこから先への入り口を意味しており、その先へ通り抜けることができます。これは透過性を意味しており、透過性のレベルこそが境界地域に特色を与えているという見方もできます。境界を砦とするのかゲートウェイとするのか。ゲートウェイ化することで紛争の解決につながった例も本書では紹介されています。

 

第6章では、国際関係をボーダーから読み換える章で、紛争や緊張状態は地政学的観点から考えるだけではなく、境界を軸にして考えることも重要だと説いています。

国同士の関係性を三角形、四角形のモデルで考える方法を提示しており、3カ国間、4カ国間の関係性を国境が隣接しているかしていないかに分けて分析しています。関係性が良くない国が隣接しているとその分国境管理の負担が重荷になります。そうした関係性の国が多ければ多いほどその国は自由度が低いことになります。接しているそれらの隣国はほかっておくことができません。

例えば、中国=ロシア=日本=アメリカの4カ国で考えると、中国とロシアはそれぞれ国境に接しており、気にかけないといけない分自由度が低くなります。それに対して日本とアメリカは自国を除く3カ国と国境が接していないので、その分自由度が増します。また、接している場合の透過度によっても自由度が変わります。自由度が高ければ高い方が他国間との関係性においては有利であることを意味します。

このモデルを使って、様々な国同士を比較してみることで、新たな視座に立てる可能性があります。

 

第七章では樺太や千島列島などについて触れ、終章では韓国の釜山と50kmしか離れていない対馬やロシアと近い北海道におけるボーダーツーリズムの可能性について紹介しています。境界を観光資源と捉えて、対馬側からみた韓国、釜山側からみた日本など、境界にしかない光景をめぐるツアーは新しい視点や考え方を与えてくれるかもしれません。

 

この本を読んで、自分なりに境界について考えてみることで、これから旅行へ行く際に新たな発見のヒントになるかもしれません。

なお、主に国境についてのお話になりましたが、海の境界、陸の境界、深海域の境界、空の境界、宇宙の境界など2、3次元的空間とサイバー空間という時間をも超越する新たなフロンティアも誕生していることにも触れられており、空間・領域 に関する境界の今後についても示唆されています。

 

ぜひ読んでみてください!